授業をより一層、みんなで学び合える環境となるよう支援するための、授業支援クラウド「スクールタクト」を提供する株式会社コードタクト(以下、コードタクト)。半田博愛さんは、文部科学省、コンサル会社というキャリアを経て、同社の取締役COOに就任されました。そして、今年の夏より大空町に移住、大空高校と連携し、ICTを活用した授業支援を行っている他、PROTO OZORAでも、東京のR/GAチームとの遠隔セッションをサポートして頂いています。

今回は、そんな半田さんに、大空高校での発見や、未来の学びの形について、お話を伺いました。

まずは、半田さんと大空高校の出会いについてお聞かせいただけますか。何がきっかけだったのでしょう?

コードタクトに入社して2年半ほど経つのですが、これまでは戦略策定や実行支援といったマネジメント寄りの仕事が多かったんです。ファーストキャリアが文部科学省だったのですが、せっかく教育業界に出戻りすることになったので、現場を経験して手触り感を得たいという気持ちはずっとありました。5年後、10年後も教育の仕事をしていくことを考えた時に、そうして培った肌感覚は、何か物事を進める際の指標になりますし、判断に対する腹落ち感も絶対増すだろうと思ったんです。

また、現在は小学校と中学校を中心に行われている協働学習ですが、今後は高校にも浸透していくだろうなと考えて、高校を見てみたいなと。さらに、せっかく現場に近いところに行くのであれば、その協働学習やICTが進んでいる高校がいいなと思っていたところ、たまたま代表の後藤が大空高校校長の大辻さんと知り合いで、相談させていただき、運よくそのまま決まりました。

PROTO OZORA 半田博愛さん インタビュー2

大空高校ではどのようなお仕事をされているのでしょうか。

私自身は教科学習の専門家ではない一方で、コンサル時代に培ってきたスキルセットやマインドセットを生かして生徒たちに伴走しながらアドバイスができるのでは、ということで、総合的な探究の時間のサポートを行っています。

そして、もう一つがまさにPROTO OZORAです。行政に身を置いていたこともありますし、コンサルではプロジェクトマネジメント(PM)も行ってきました。そして、現在は曲がりなりにも教育業界に携わっていて、それらを掛け算した時に、学校側のPMとしての役割がはまるのではないか、やってみては、という話を大辻さんより頂いたんです。

大空高校にはどのような印象を持たれていますか。

カリキュラムマネジメントが柔軟なので、単に国語を教えました、数学をやります、ということよりも、産業社会と人間や、総合的な探究の時間に力を入れています。何を学ぶかというよりも、今後どう生きていくのか、というところから逆算した学びの設計になっていると感じます。

また、ICTがツールとして完全に浸透しきっています。端末が生徒一人ひとりに配布されているのですが、フィルタリングもありませんし、授業ごとに端末を回収・管理するといったこともなく、基本的にはプライベートと同じように、生徒自身が欲しい情報にすぐアクセスできる環境があります。学習者主体の考え方で仕組みが構築され、そして運用されているように思えます。

生徒の主体性に任せているんですね。

大辻さんの言葉で印象に残っているのが、端末を渡して、先生の話を聞いていない生徒がいるとしたら、教える側にもある意味で問題があると思った方がよい、ということです。教える側の内容が、元々面白くないものであったら、端末がなかったとしても、おそらくノートにいろいろと漫画を書いたり、別の作業をやっていて、それがたまたま端末になっただけだと。学習者視点を追求されている点はすごいなと感じます。

生徒の皆さんはどのようにICTに接しているのでしょう。

いわば文房具の一つとして、必要なときに必要に応じて使う、という発想になってるのかなと感じます。PROTO OZORAではSlackやMiro、Google Meetを使っていますが、ファシリテーターが発行したURLに繋がらなかったことがありました。その時、生徒自身が機転を利かせてURLを発行し、ファシリテーターに送ったんです。ICTが浸透しているという印象を受けました。

もっとこうしたらさらに良くなる、という部分はありますか。

個人か、もしくは一対一の関係でデジタルツールを使うということに対しては、ほぼ問題がないと感じる一方、チームなど多人数で協働できるようになってくると、もっと良くなるのではと感じることがあります。ただ、これはICTというよりは外部環境に要因がありますが、情報が溢れている現在、取捨選択したり、そもそもスピードが速くて追いつくのが大変で、以前よりも、自分を内省して意見をかたちづくり、それを相手に対して伝えていくということが難しくなっていると思います。

また、インターネット社会ではあらゆるものがトレースされやすく、特にSNSなどでは、自分が「これくらいでいいだろう」と思って出したものが叩かれるケースもある。すると、意見を先んじて出していくことにためらいを感じやすくなるのではないでしょうか。

自分の考え方を周りに対して共有することで、議論が活性化していくということが、なかなか起きづらい状況になっているのかもしれません。

インターネット社会に日々接することで、自然とそうなっていく側面はありますね。

コードタクトのフィロソフィーにも繋がるのですが、そのような環境の中で最も大事にしたいのは、自由に失敗できたり、自分の考え方を自分のペースで考えられるようなコミュニティをいかに作っていけるか、という点かなと思います。

代表の後藤と話していても、ミッションやビジョンの先にあるのは、そうしたコミュニティだろうなと。そして、そのコミュニティが幾重にもある中で、自分が本音を安心して話せたり、相談できる環境をいかに実現するかが重要なのではないかと思います。そのような環境で、自分を内省したり、相手と対話することでまた内省の質を上げたり、経験を生かしていくようなサイクルを回すことが大切です。

以前であれば、オフラインを中心に、そういった関係の質と思考の質のバランスを自然と取ることができていたと思うのですが、現代ではオンラインにそのような場を作ることが求められていると感じます。

スクールタクトではまさにこうした点を追求して取り組んでいて、最終的には、ドリルのような個人学習での学びと、他の人と学びあう時間の両方がある中で、自分のペースで様々な知見を身につけて、自分が所属するコミュニティでそれを安心して伝え、フィードバックがもらえ、学びの楽しさが増していく。そんな学びの環境を作っていきたいと思っています。

PROTO OZORA 半田博愛さん インタビュー3

共に学びあえるような仕組みができるといいですね。

教室という枠組みの効果の一つがコミュニティですし、教室の中にあるグループもまた一つのコミュニティだと思いますが、ゆくゆくは教室の外にも可能性を広げ、コミュニティをハイブリッドで形成する、そのお手伝いができればと考えています。例えば、総合的な探究の時間では、もともとは紙で授業を実施していましたが、スクールタクトのプロダクトに置き換えてもらい、より協働が深まるコミュニティが作れないかというトライアルもやらせていただいています。

また、現在は、例えば生徒が自治体や消防署に話を聞きにいく、ということを行っていますが、将来的には時間や空間を超えて、一つのオンラインコミュニティの中で完結できないかなと。自分の考えをアウトプットする時に、意見をもらいたい人に気軽にアクセスできて、非同期でフィードバックをもらう、つまり、ネットワークで繋がっているようなイメージです。

学校が学校としてあり、さらに、共生するコミュニティが寄り添うように広がることで、学びの可能性もまた伸びていくと思います。

PROTO OZORA 半田博愛さん インタビュー1