女満別空港はなぜ出来た?

大空町に来られた方によく言われるのが
「網走や知床に行きたくて女満別空港を利用したけど、大空町は全然知らなかった。」
「いつも素通りしてしまっていたけど、大空町っていい町ですね。」など。

大空町は、平成18年に旧女満別町と隣の旧東藻琴村が合併して出来た新しい町です。
今はまだ知名度は低いものの、空港のある町として
広々とした青空を連想させてくれる、とても良い名前だと思います。
大空町の女満別地区にある女満別空港は、道東地域へのアクセス、
特に北見市や網走方面への移動に便利です。
また、観光やビジネス利用においても、知床やオホーツク圏を訪れる際の
重要拠点として利用されています。
そんな、女満別空港はいつ頃建てられたのでしょう?

女満別町がまだ女満別村だった頃。
田舎の小さな村になぜ空港が出来たのか?
今回は歴史を辿りながら、その理由を探っていこうと思います。

○女満別村に来た根岸飛行士
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昭和9年12月。2人の男が女満別村の駅のホームに降り立ちました。
飛行士の根岸金蔵(当時33歳)と気象台調査技師(のちに博士となる)の関口鯉吉(当時49歳)です。

この頃、北海道から東北にかけての地域は毎年のように冷害に襲われ、凶作が続いていました。
女満別村も例外ではなく、生活に困り内地へ出ていく人が多く居ました。
学者たちは北海道の農業の不作の原因をつきつめて、対策を講じようと頭を悩ませました。
「長く続く冷害と流氷は関係があるのではないか。」
そう考えた安藤博太郎農学博士により、2人は調査を命じられ、この地に調査に来たのです。
安藤博士は「流氷が多いときほど冷害が多くなるのではないか。」と仮説をたて、
飛行機による流氷観測を提案。
流氷観測飛行の拠点となる空港建設に、女満別の競馬競技場の跡地(約30ヘクタール)が選ばれました。

根岸飛行士は、何もない静岡海岸にいちから飛行場を建設した人物です。
女満別村議会は空港建設の申し入れを快く受け入れ、
10年間無償で飛行場用地を貸すことを約束しました。

白紙に戻りかけた空港建設
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昭和10年3月11日。
女満別村にはすでに流氷観測器機10(イチレイ)式が運び込まれていました。
雪解けで地面が見えてきたところ、滑走路にある事実が発覚します。
大量の木の切り株があるのです。
「これでは空港を建てることが出来ない。」と、
白紙に戻ってしまうかに思われた空港建設ですが、
その状況を変えたのは、他の誰でもなく、その地に住む村民たちでした。
互いに声を掛け合い、村全戸から計1300人が集まり、
無償で切り株の除去作業が行われました。

まだ誰も見た事がない飛行機。
冷害に悩まされ、段々と人口が減っていくこの村で、
空港が出来ることは人々の希望になっていました。
村民達がわずか一週間で切り株だらけの土地を、
国から許可が出る基準(幅50メートル、長さ300メートル)の滑走路に変えたのです!

皆の想いを乗せて流氷観測飛行へ
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昭和10年3月23日
根岸飛行士の空港が完成し、無事流氷探索機が飛び立ちました。

飛行機は赤いインクの入った風船3つを直線状に流氷の上に落とし、
3日後にインクに染まった流氷がどれだけ動いたかを観測します。
これを繰り返すことで、流氷の動きと冷害への影響を調べるのです。
流氷観測飛行は地味で命がけの作業です。
根岸飛行士は最後を迎えた時のために、酒を一本、常に飛行機の中に用意していたそうです。
流氷観測は10年間続けられ、この流氷観測飛行によるデータは夏の天気予報に大いに貢献しました。

翌年の昭和11年は北海道北部で、世紀の皆既日食が観測された年です。
6月9日、女満別にも当時一流の天文学者達が集まりました。
その中にはもちろん、関口鯉吉博士の姿がありました。
取材のために、各新聞社や映画の報道陣が女満別の飛行場に降り立ち、
村はときならぬ賑わいを見せたと記録されています。

○その後
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昭和12年 観測飛行以外にも、海軍の飛行訓練場として利用されるようになる
     滑走路も拡張される
昭和20年 太平洋戦争終戦 米軍に接収される
昭和31年 正式に女満別空港として認可が下りる
昭和33年 米軍から全土地返還
昭和55年 女満別~東京がYS機による直行便で結ばれ、新しい時代の幕開けとなる
昭和60年 新女満別空港が開港、ジェット化される  
現在に至る

流氷観測飛行の為に、建設された女満別別空港。
今では年間約76万人が利用する、北海道の空の玄関口となりました。
女満別空港をご利用の際は、この地で飛行機が羽ばたく姿を夢見た人々が居たことを
少しだけ、思い出してみてください。


〈引用〉・女満別小史・マンガ 飛翔 女満別空港物語/岩原裕二・大空町史 

ーーー最後までお読みいただきありがとうございました!    

 

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