一度は北海道を離れたことで、その魅力に気づいたと語るネイチャーガイドの岸さん。「北海道グレートアドベ ンチャー」の代表として、大空町と札幌市を行き来しながら、アウトドアアクティビティの拠点作りを進めてい ます。大空町のポテンシャルと注目しているポイント、そして将来実現したいことについて、熱く語っていただきました。

大空町のアウトドア拠点としての強みは、どこにありますか?

まず空港の利便性の良さですよね。主要都市から乗り入れています。道東エリアを訪れる上での拠点になると思います。このエリアの財産と言えば、人気のリゾート地にも負けない雪質と四季で遊べる多彩なフィールド。 夏場には湖と海があり、遊べる大自然もある。

今でこそ国際的なリゾート地のニセコ町ですが、30 年前は、今の大空町と変わらないくらい田舎でしたから。

すべてのエリアを比べて勝ち負けだけの世界ではないですが、勝ってる、と感じます。

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まだまだ評価されるべき北海道ならではの魅力がある、と。

関東だと移動する距離じゃないかもしれませんが、北海道だと50キロ圏内はクルマで日帰りの距離だったりします。

すぐそばに阿寒湖もありますし、屈斜路湖と知床も近いですよね。これだけのフィールドがお金をかけずに行けるなんて贅沢です。地元だと、まだまだ評価が低いんですね。知床ですら世界遺産になって初めて価値に気づいた、なんてこともあります。その価値を “表現” できているガイドが少ないのも現状です。

ひとつ残念なのは、地元の食材を活かしたお店が少ないこと。逆に関東や関西には、道東の食材を活かした店があるんですよね。

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大空町の魅力を最大限 “表現” するためには、何が必要ですか?

地元のマイナスをプラスに変えること、だと思っています。

今では人気の知床の流氷ウォークも、地元では危ないと言われていたことをアクティビティにしました。大空町は、北海道を代表する寒冷地の一つ。だとしたら、寒さがないとできないプログラムを提案しようと。

マイナスをプラスに変える人がいない、誰もやってる人がいない。それなら、チャンスじゃないかと。大空町からの声かけがあり、色々な地元の方々と繋げていただきました。大空町は、自分にとっては面白いフィールドだと感じています。

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ネイチャーガイドになられたキッカケを教えてください。

消防士になる夢を諦め、北見市と札幌市でスイミングスクールに勤務した後、ウォーターパトロールの資格を取るため、単身沖縄県に移住しました。沖縄県の国立公園のアウトドアの現状を観察し、島々をパトロールするうちに、お客さんと楽しくコミュニケーションを取れるガイドという職業に興味を持ちました。

そうして 10 年間行ったり来たりしているうちに、北海道のアウトドアの凄さに気づいたんです。一度離れたからこそ魅力がわかりました。自分しかやれないことがある、ガイドとして攻めるんだと決めました。

北海道をブランドとして大切にし、1年間じっくりネーミングを考えて「北海道グレートアドベンチャー」という会社を作りました。夏のプログラムとして、初めて SUP(スタンドアップパドルボード)を提案したのも私たちです。まず、2014 年 6 月後半から 8 月~ 9 月に facebook だけで募集したところ、土日のツアーが全部埋まりました。参加したのは、全員道外からのお客様でした。

大空町には、網走湖、近隣には、サロマ湖や屈斜路湖という素晴らしいフィールドがあります。カヌーとカヤックで海に出ることは難しいですが、湖であれば、初心者でもガイド付きのツアーに参加できるんですよ。

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アウトドア初心者でも楽しめるツアーが続々と誕生しそうですね。

空港もあるし、フィールドもある大空町なら、まだまだ開拓できると思っています。私のようなプロガイドでも、 夏も冬も両方同じ地域をガイドするという人は少ないんです。だからこそ、オールシーズンで表現したい。

道東は見るだけの観光がどうしても多いので、バスツアーなどでは、半分以上移動時間になってしまうんですよね。私が考えているガイドは 2 種類。スポットガイドとして一拠点を案内する。もう一つは、スルーガイドとして移動も含めてガイディングすること。となると、寝てる時以外はお客さんと一緒なので、ネタも尽きるかもしれませんが(笑)。

2022 年の冬は、リサーチとフィールドづくり。夏は、モニターツアーを実施します。札幌市と行ったり来たりしながら、来年の冬から本格稼働したいと考えています。自分のような動き方が、大空町への移住定住のキッカケにもなればと。そして、実行委員長を努めている北海道アウトドアフォーラムなどを通じて、仲間の北海道のプロのガイドに声をかけて拡げていこうと考えています。

北海道旅は、女性お二人で来られる方が多いこともあり、ストレスを感じさせないように安全安心を大切にしています。ガイドのひとりよがりにならないようなツアーを心がけています。

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今後チャレンジしていきたいことは?

また来たくなる地域の表現とはなんだろう、試行錯誤しながら、自分を鼓舞して物語を作っていくんです。本物のデザインにしていくためのネタを考えるんです。マイナス 25 度の中、沸騰したお湯を振りまいて一瞬で雪になる「ボイリングウォーターチャレンジ」を日本で初めて発案したのも我々です。

保守的にならず、攻めていきたいです。地域をガイド目線で表現する「インタープリター」として、次世代にそのスキルを伝えていくことが、次の使命だと考えています。ただやってみせるに留まらず、どうやってガイドとして表現するのか、伝えていきたいです。

それが、地元の人たちがガイディングに目を向けるキッカケになるかもしれません。ガイドが仕事になるということが、若者にも伝わる。出張で訪れたサラリーマンが撮った一枚の写真が、口コミで拡がるかもしれない。 移動の合間にできるようなアクティビティがあってもいい。次は家族で来るキッカケになるかもしれない。

地元の人達が、自分ごととして見れるようになって、外からの人の流れが変わってくれば、変化は訪れると思います。

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行政へ伝えたいことはありますか?

家族がいて、子供がいる立場で、自分だけのことを考えていればいいということではありません。大空町のネットワークに助けていただいたことで、拠点を設ける計画をすすめることができ、札幌市との行き来がしやすくなりました。

大空町へ要望があるとすれば、公衆のパウダールームの設置です。維持管理も必要になってくるので、有料サービスでもいいかもしれません。アクティビティの前後での着替えをする場所や、シャワールームなどがあると、より良い環境になるのではと思います。まだ北海道では、ほとんどそういう場所がありません。

さらに、人が集まって情報収集やコミュニケーションを取れるような場所、飲みながら仲良くなれるスポットがあったら、最高ですね。

北海道グレートアドベンチャー

住所 〒099-3212 北海道網走郡大空町
電話 090-2688-4688
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編集部あとがき

岸さんの冬の網走湖ツアーを体験させていただきました!スノーシューの装着から歩く練習、動物の足跡の見分け方など、説明の一つひとつがわかりやすく、トークを楽しみながら自然に知識がついていきました。結氷した湖面をザクザクと歩いた後のあったかいココアと炙りたてのソーセージの味、忘れられません…。夏のツアーが今から楽しみです!