R/GAとはどんなことをしている会社なんでしょうか?
私たちがお付き合いさせていただいている企業様から、「新しいブランド体験を作りたい」「マーケットシェアを上げたい」「新しいマーケティングモデルを構築したい」といったさまざまなご相談をいただきます。それを戦略、ストーリー、デザイン、テクノロジーなどをうまく組み合わせることで、答えを導き出すという仕事をしています。
具体的には、戦略策定や新しい仕組み作りの提案から、グラフィック/映像/ウェブ/インスタレーション/イベント/商品開発/プラットフォーム開発など、幅広くやっています。
工藤さん自身はどのようなプロジェクトを手がけられてきたのでしょうか。
会社では、プロデューサー、プランナー、クリエイティブ、クライアントフェーシング、新規ビジネス開発、トラブルシューティング(笑)まで、ほぼ肩書き関係なくやっています。
プロジェクトが始まる際には、大きなテーマや課題をいただいた後、どのようなアプローチでいくかを考え、それを細かいプロセスに一度落とし込みます。あとは、チームをまとめて、都度軌道修正しながら、一歩一歩前に進めていく、そんな流れです。
例えば、資生堂の皆さまとご一緒させていただいた「My Crayon Project」というプロジェクトでは、子どもたちの肌色のデータを計測し、一人ひとりの肌色クレヨンを作る、という特別授業を小学校で行いました。肌色はみんなそれぞれ違うという気づきから、個性の大切さを伝えるというブランドコミュニケーション施策でした。
プロジェクトの当初、資生堂の皆さまとワークショップを行い、今後のブランドコミュニケーションを考えていく上でどんな機会があるのかを発見するところから取り組み、議論を重ねてアイデアを具体化していきました。その過程の中では、クレヨンの紙も巻きましたし、深夜に会社で一人、クレヨンの数をひたすら数える、という仕事もしていました。全部、微妙に色が違う肌色なので、だんだんその違いがわからなくなってくるんですよね(笑)
少し脱線しましたが、このような細かい業務も普段から行っているので、大きな課題に取り組む際にも、次、何をしないといけないのかという細部の工程もイメージしながら、プロジェクト進行やアイディアを組み立てるクセがついたのだと思います。
PROTO OZORAはどのように進められるといいでしょうか。
「まちをまるごとプロトタイピング」と宣言しているので、新しい視点のアイディアを作るのは大前提として、政策提言で終わらせずに、それをちゃんと実装させ、そこから新たな発見を得る、というところまでしっかりと持っていきたいと考えています。
そのためには、いつもの仕事でやっていることと変わらないのですが、細かい制限を気にせずに、自由にアイディアを発散させる場面と、現実的に予算やスケジュール、法律、テクノロジー、倫理観などで制限をかけていく場面のバランスをしっかり見定めていきたいなと思っています。
正しいけどつまらないものは絶対にやりたくないですし、おもしろそうだけど企画倒れになりそうなものを提案する、ということも避けたいので、勝負すべきポイントがどこかというのを、はっきりと見つけられるとよいなと思っています。
また、プロジェクトをどう進めていくかのプランは設計はしていますが、きっと思い通りにはいかないと思っています。アイディア作りで行き詰まったり、議論の方向性がそれたり、スケジュールが押していったり。きっとぐちゃぐちゃになっていくでしょう。そこで都度交通整理して、立ち返れる場面をしっかり作り、うまく軌道修正をかけていくことは、しっかりやっていきたいですね。
思い描いたことを実現させる喜びをみんなで味わうために、楽しいけど、ちょっとタフな時間を乗り越えていきたいと思っています(笑)
前回のセッションではアイデアの切り口の話もありましたね。
今回、せっかく町を知り尽くしている大空町の役場の皆さまもチームの中にいるので、アイディアと活用できるリソースの物物交換を行っていくスタイルで、プロジェクトが進んでいくといいなと思っています。
例えば、これは関係人口を増やすというアイディアの例ではないですが、「北海道の広大な自然を感じながら味わえるじゃがバタ屋さん」を作ろうみたいなアイディアがあったとして、検討を進めていく中で、「じゃがいもの生産者の協力を取りつけられそう」「このキッチンカー借りれそうだよ」「この土地使っていいよ」みたいなやりとりが生まれるとおもしろいなと。地域とつながっているプロジェクトのおもしろさの1つはこういうところにあるのではないかと思っています。
ありがとうございます。最後に、工藤さんは大空町にプライベートでも来られたことがあるとのことでしたが、町にどのような印象を持たれていますか?
2年前ですね。毎年夏に北海道をキャンプしながら巡る、総運転距離3,000kmという家族旅行をしてました。キャンプ用具を車に積みこみ、東京から八戸までいき、苫小牧港までフェリーに乗り、そこから知床を目指していました。その最初の中継地点として、ひがしもこと芝桜公園のキャンプ場にたまたま泊まったんです。当時は、公園で遊べるゴーカートは楽しかったなぁとか、屈斜路湖やサロマ湖、網走にアクセスするのに便利な場所だなぁ、くらいの印象だったんです。
しかし、今回のプロジェクトを通して、大空高校はもちろん、肉の楽しさを伝えてくれた精肉店の肉将さんや、廃棄される予定のしじみから、しじ美醤油を作る大空三昧さんなど、意欲的で、おもしろい取り組みをしている方がこの町に住んでいることを知ったんです。交流人口としての旅行者目線では、素通りしてしまっていることが実は結構あるのかもと気付かされた瞬間でした。
もしかしたら、この町オリジナルの職業を作っていくこともできるかもしれませんし、美味しい肉と広大な土地を利用して、その先の体験をつくり、わざわざ飛行機に乗って食べにくるような仕掛けを作ることもできるかもしれない。
町役場の皆さんも「この町を変えていこう」という熱量がとてつもなくあるので、新しい取り組みが生まれる可能性はとても高いと感じています。
すでにそこにある魅力を引き出すだけでも、「PROTO OZORA」はどんどん面白くなりそうですね。
R/GAメンバーも、単なるファシリテーターで終わることなく、高校生の皆さんと同じように、一緒に知恵を絞っていければと思っています。
プロジェクトを立ち上げることは始まりにすぎないので、気づいたら雪だるま式におおごとになったり、思わぬ方向に進んでいったり、そんな予期せぬ展開にも期待しながら、プロジェクトを楽しんで進めていきたいと思います。