地域住民の健康維持増進や予防医療を行っている「大空町東藻琴診療所 」。訪問診察や在宅医療を通じて、多くの方のニーズに応えられるように体制を整えてきました。今回は、福岡市にある九州大学や九州医療センターで心臓外科医として 8 年間勤めた後、2015 年 4 月に大空町東藻琴診療所の所長に就任された山木悠太先生に、 地域医療のこれからや、大空町で実現したい夢についてお話いただきました。まちのかかりつけ医として、子どもから大人まで安心して来てもらえる診療所を目指しています。
体験が終わったら、修了証明書を全員に授与しました。

大空町東藻琴診療所
所長 山木 悠太さん

東藻琴診療所に赴任したキッカケを教えてください。

山木先生 : 大空町に移住して、今年で 10 年目になります。福岡で 8 年間住んだ後、地元の北海道に帰って地域医療に関わりたいと思っていたタイミングで、大空町にご縁をいただきました。大空町東藻琴診療所が設立された当初は、長期にわたって先生がいらしたのですが、最近では、長くて 2〜3 年で交代してしまう、という現状でした。地元に密着して長い間患者さんを診る、というのが当初の目標でした。

写真画像

大空町の中で完結した医療が理想ではありますが、現在は、周辺の大きな病院と連携して、役割分担をしています。私たちの診療所は、比較的病状が落ち着いている慢性期の患者さんを中心に受け入れています。通院が難しい方や高齢者が多いため、訪問診療や在宅の看取りなどをできるよう環境を整えてきました。入院施設ではないため、外来の診療がメインになります。

東藻琴診療所を、町の人に必要とされる病院にしたいと思っています。体調が悪い時に、まず来てもらえる場所になりたいです。そして、医療従事者の人員不足を解消するために、同じような志の仲間を大空町に呼びたいと動いています。医学生や初期臨床研修医の受け入れも、今年度から始まっていますし、学会等で経験豊富な先生方と繋がりながら、大空町の魅力を訴えることも継続しています。

写真画像

また、クルマで 20 分程度の網走市、北見市や美幌町には小児科がありますが、大空町にはありません。出張でも良いので、決まった日に小児科医に大空町に来てもらえるようになってほしいです。大空町女満別地区の救急医療も担当しているため、夜間の対応が難しいのですが、今後は東藻琴診療所を 24 時間対応できる診療所にしたいと考えています。
自分は若手の方なので、頑張らなくてはと思っています。自分が楽しそうに、余裕のある状態で働く姿を見せることで、同じように地域医療に関わりたいと思う人が増えてほしいです。

働く前と働き始めてからとで、大空町の印象は変わりましたか ?

診療所で働き始める前は、大空町は閉鎖的なところではないかと思っていました。でも実際は、患者さんや住民の方に歓迎していただき、ストレスなく生活をはじめることができました。ご家族のことや、近況のことなど、診療以外のこともゆっくりお話することができています。
一住民として、野球チームや、盆踊り、ふるさと祭りロール転がしなどの地域イベントなどに誘ってもらえたのが、うれしかったです。

集まった子どもたちが医師になって医療現場を体験。
集まった子どもたちが医師になって医療現場を体験。

以前働いていた島根の町は、人口 1000 人未満の村でした。そこでは、地域の子どもたちを招待して「お医者さん・看護師さん体験」をやっていました。私の中で、医師と患者さんの距離の近さが印象に残っていて、そういう場を作りたいと感じました。

大空町でもやりたいと思っていましたが、コロナ禍だったこともあり、構想から 4 年目でやっと実現したのが、子どもたちが医療現場を体験できる キッズドクタープロジェクト です。北見赤十字病院の谷口先生に全面的なバックアップと背中を押していただいたことに、感謝しています。

医療に従事することの大切さを知ってもらい、参加した中の 1 人でも医療従事者になってもらえたら嬉しいです。また、医療従事者にならなくても、なにかのきっかけを与えることができたらと考えています。理想としては、このようなイベントを通じて、子どもたちが学校帰りにちょっと寄っていくような、学校以外の溜まり場のような場所になれたらと。診療所としての役割に加え、町の一施設として捉えてもらうことで、利用のハードルを下げたいと思っています。町のインフラとしての役割も大事ですね。ご両親が働いているご家庭のお子さんが、診療時間後に立ち寄れて、勉強を教えてもらえたりとか、そんな役割も担えたらと感じています。

隣町の病院スタッフや消防の救命士が超音波エコーを実演
隣町の病院スタッフや消防の救命士が超音波エコーを実演

隣町の病院のスタッフの方々や、救命士の方々、大空町の行政の方にもサポートいただきました。教えることで自分にとっても勉強になり、開催側も学びになりました。小さい子どもたちへ指導する際にも、気付きが多かったと思います。地域を支えようと思う仲間たちが揃ったので、他の自治体にも広げて継続したいと思います。顔が見える関係が構築できました。

子どもたちにとっても、頭も体も使った充実の時間になったかなと思います。いつも診察をしている子どもたちの普段は見ない一面を見ることができました。真剣な眼差しで取り組んで、一生懸命やっている姿に、うれしい気持ちになりました。保護者の皆さんからも、経験させることができてよかったとコメントをいただき、開催してよかったです。

これらは独自で考えたプログラムですが、医療的に難易度が高いものも経験させてあげたいです。島根で体験したような傷を縫ったり、訪問診療に先生と一緒に同行したり、救急車に乗ったり、といったことも考えています。子ども用の白衣を用意してあるので、近隣で同じようなイベントを開催する時にも、レンタルできるようになりました。

継続して続けたいと考えていますので、年度内に 20 〜 25 人規模で、また開催したいです。今回は春休みの開催でしたが、次回は学校の行事に重ならないように調整しています。

白衣を着ると気分もお医者さんに。
白衣を着ると気分もお医者さんに。

練習キットを使って縫合にチャレンジ。
練習キットを使って縫合にチャレンジ。

地元消防隊が救急救命を指導。
地元消防隊が救急救命を指導。

聴診器で問診体験も。
聴診器で問診体験も。

好きなものをレントゲンで見てみよう。
好きなものをレントゲンで見てみよう。

中がこうやって見えるんだね。
中がこうやって見えるんだね。

企画の内容を伝えた時に、町長が背中を押してくれたので、感謝しています。今回は移住体験で大空町に来ていたご家族にも参加してもらえたのが、とてもよかったと思いました。地元の子どもたちが移住体験のお子さんと会話できている姿を見て、彼らにとっても良いことだと感じました。

同じ志の人を大空町に呼びたいので、今後も行政の方と一緒に活動していきたいと思っています。例えば、医療従事者は健康に気を使っていて、マラソン大会に参加する人が多いんですね。大空町の ふきおろしマラソンや近隣の大会に医師たちが来た時に、大空町の魅力を知ってもらい、いずれは、町へ働きに来てもらえるように出来たらいいなと思います。

また、町の施設で現在活用されていないピアノを診療所で使わせてもらうなど、患者さんや来てくださる方の QOL(Quality of life=生活の豊さ)を上げたいですね。

体験が終わったら、修了証明書を全員に授与しました。

体験が終わったら、修了証明書を全員に授与しました。

所長からのメッセージ

この地域の安心できる「かかりつけ医」として
平成 27 年 4 月 1 日より、大空町東藻琴診療所の所長として就任しました。前所長より引き続き、地域住民への健康維持増進や予防医療などを通じて、安心安全な医療向上に努めていきたいと思っております。

○風邪・高血圧・高脂血症・糖尿病・胃腸疾患など内科一般の診療。
○消化器疾患に対する消化管内視鏡装置・超音波診断装置を用いた診療。
○大空町指定管理医療機関として予防接種・特定健診・学校や各企業様の健康診断の実施。
○地域での病診連携を重視し、適切な専門病院・他科の専門医への紹介。

写真画像

大空町東藻琴診療所 在宅療養支援診療所

住所 〒099-3201 大空町東藻琴 383 番地 31
電話 0152-66-2611
WEB ホームページ
大空町 HP https://www.town.ozora.hokkaido.jp/soshiki/1007/4/1/468.html