2021年の冬に、ご家族で大空町に移住した森本さん。京都の肉屋さんで培ったキャリアをフルに活かしながら、全国に真の肉の美味しさを広めようと考えています。夫婦として考えていること、お子さんの変化など、家族での移住ならではの視点からお話を伺いました。

大空町に移住したキッカケとタイミングは?

2021年2月中旬ごろ、京都より移住いたしました。現在38歳、生まれも育ちも京都で、35年間ずっと暮らしていました。仕事は15年間、精肉店京都中勢以(以下、 京中)さんで勤め、肉の知識が全くないところから、技術・知識・考え方、生産者との繋がりを大事にすることなどを教えて頂きました。

そこに研修・修行という形で大橋遼太(知床牛生産者・現弊社代表)が入社し、約2年間共に仕事をする中で、自由で発想力豊かな人柄に惹かれました。どんな環境で育てば、こんなにも魅力ある人間に育つのかなと考え、大橋の地元、北海道大空町に興味が出たのが6年ほど前でした。

その3年後、大橋から連絡があり、大空町東藻琴に自分で育てた大切な知床牛をより多くのお客様へとお伝えするための場所 「精肉店肉将」を立ち上げたいと相談を受けました。 自身が京中で学んだ技術・知識・伝える力を活かせるのではと考え、そして京中時代に感じた、自由と豊かな発想力をつけるには大空町の環境がいいのではないかと思いました。子育て中(当時10歳・4歳)でもあったので、大空町で子育てをしたい!!と決断しました。 今思えば、自分の仕事より、大自然と触れ合いながら育つ子供の成⾧が楽しみでわくわくしていましたね。

移住体験談 画像

一緒に移住されたご家族の反応はどうでしたか?

あなたがやりたいなら私達はついていく、と妻は言ってくれましたが、網走監獄の印象が強い妻の両親からは、気温がマイナスになる極寒地で暮らしていけるのかを心配されました。根拠が無いので「暮らせます!!」と、その時ははっきりと言えませんでした。そこで、家族4人で北海道に2週間移住体験をすることになりました。

2月初旬は、雪が積もっており気温もマイナス。女満別空港を出たら寒さより痛さに驚きました。 子供たちは大雪にテンションが上がり、雪質がサラサラやぁ!!雪だるま作れへんと笑っていました。 氷点下での生活体験や慣れない雪道の運転、また、網走湖での雪上ラフティングボートや雪山でのそり滑りなどのアクティブ体験もし、北海道の楽しさと厳しさを一部ではありますが、家族で体験・体感できました。大空町の雄大な自然の中、子供たちの楽しそうな姿を見て『厳しい環境ではあるが、人として生きる力・強さが学べ身につけることが出来る 素晴らしい環境です』と伝え両親を説得し、許可を頂きました。

移住当時、子供たちは幼稚園年中・小学5年生で、いいタイミングだったと思います。大空町では、子供たちの距離感は近く、みんな優しく接してくれて、すぐに溶け込む事ができました。授業参観でも、生徒の発言力が高く、自分の意見をはっきりと言えていました。協調性も大事ですが、自分の意見や考えを明確に表現・発言できるように育ってほしいので、教育面でもいい環境だと思いました。 10年、20年後の子供の成⾧が楽しみです。

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肉将の魅力はどんなところですか?

私たち肉将の理念は『牛と肉と人をつなぐ』 。肉将の立ち位置には、生産者とお客様をつなぐ大切な役割があります。

知床牛がどういった環境で育ち、生産者がどういった思いを持って肥育しているのかをお客様へとお伝えすること。 さらには、肉将だからこそお客様にお伝え出来る事が魅力でもあり、 『肉を知る喜び』『肉を買う楽しみ』を提供できるよう心掛けています。 そのためには、精肉店に必ずある精肉を陳列するショーケースは置いていません。 初めての方はもちろん戸惑いますが、私が責任をもって、お客様と会話をしながら 御用途(ステーキ・焼肉など)・お好み(赤身・霜降り・柔らかさなど)やご予算などをお伺いし、 肉の塊からその場で用途別にカットして、ご用意しています。
今後は、日本全国に知床牛を広め、大空町東藻琴にこんなに美味しいお肉があるんだよと伝えていき、大空町に少しでも関心を抱いて頂けるよう努めたいと思います。

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家族で移住を検討中の方へのアドバイスは?

子どもたちを見ていると、彼らが日々の生活の中で感じる感動は、地元で育ってきた子たちよりも何倍も多いんじゃないかと。だからこそ、家族全員でいらして、まずはぜひ体験してほしいと思います。

今、自分は30代ですが、残りの人生をどう生きるか、どう家族と過ごすか見つめ直す最後のチャンスだと思いました。移住の体験をするだけでも、知るだけで変わってくる。何も行動せずに、過去を振り返って後悔するよりは、まずはやってみるのもいいと思います。映像や文章だけでは伝わりづらいですし、実際に体験してみないとわからないこともあります。

ここでの生活は、「終学旅行」、終わりを学ぶ時間だと思っています。子どもたちが独立したら、夫婦二人の時間が増えるので、大空町なら、女満別空港からどこへでもいける。仕事だけではなく大事な人と、どう時間を過ごしていくか。今から考えて、どこへ行こうかと二人で楽しく話しています。

大空町へ移住してからは、帰ってきて安心する場所ができた、そんな感覚です。街での生活に疲れていたんだな、と。大空町は、心の距離がとても近い町だなと思います。大雪が降った時に、隣の90歳のおばあさんを心配して様子をお伺いしたら、それよりもあなたのほうが心配だと、言葉をかけていただきましたね。

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行政へのリクエストやコメントはありますか?

もっと移住する人の想いを汲み取れるといいかなと。役所の手続きが、思ったよりも面倒で、書類の取り寄せなど、後手後手になってしまい、必要な情報をまとめて事前に教えてほしかったなと思います。なにが不便だったか、移住した人の声を拾うためにフォローアップするといいかもしれませんね。

地域の移住者の間でも、同じような声はあがっているので、移住を決めた後に最初にぶち当たる壁を取り除ければ、さらに頼りがいのある役場になると思います。

肉将

住所 〒099-3212 北海道網走郡大空町東藻琴 84-1
電話 0152-63-5529
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編集部あとがき

肉を買いに来ただけなのに、満たされた気分で帰路につく。肉将は、大橋社長と森本さんが描いた「贅沢な時間を過ごせる肉屋さん」です。森本さんとショーケース越しに向き合って、肉をコンシェルジュしてもらううちに、どんどん高まる気分。おいしく肉をいただくシーンを妄想するだけで、思わず笑顔になりますよ。